北の大地を廻る#3
前日のあらすじ
海線山線を乗り通した。
2/4 札幌
スマホのアラームに気づいて目を覚ましたのは6時前。
この日は昨日ほど早くに動き始めるわけでもないので、こまごまと荷物整理をしながらホテルの部屋で朝食が出る時間までゆっくりしていました。
ちなみに今回のこの旅行、泊まるところとして基本的に東横インを使っています。
駅に近い、大きめの町には大概ある、そして何よりU35割なる破格のセールをやっている*1等々、使わない手はありません。
それに付随してくる無料の朝食もなかなかにありがたいもの。使えるときには使い倒していきましょう。
解けて凍ってを繰り返したのか、妙にぼこぼこした駅前の歩道を歩いて札幌駅へ。
ほぼほぼアイスバーンに近い路面を自転車で走っている人もいたりして、鍛えられてるんだなあとそんなことを思ったり。
今日も朝から特急で移動。
長丁場になるので、あらかじめ駅弁やら飲み物やらを買い込んでホームに上がります。
普通やエアポートの比較的近郊の行先が並ぶ中、1つだけ異彩を放つ”稚内”の文字。
北の大地の、北の果て。行くぞ稚内!
流石に平日とはいえ、この長距離を走る特急がどれぐらい混むのかは未知数。
念の為と思って前日札幌に着いた時点で指定席を取っていましたが、蓋を開けてみれば窓側席は大方埋まるほどの乗車がありました。
自由席は確認こそしていませんが、札幌含む函館線内の各駅で自由席の乗車位置に人が集まっているのが見えたのでそういうことなんでしょう。
それよりも少し意外だったのが、同区間を走るライラックやカムイのように、札幌-旭川間のみを利用する人が少なからず居たこと*2。
この列車が札幌を出た20分後にライラックも出るので、そっちを使ってもいいのでは?とは思うのですが、旭川9時ちょうど着の宗谷の方が何かと都合が良かったりするんでしょうか。
前日夜の遅れの原因となっていた岩見沢近くでは、もはや小山みたくなっている吹き溜まりや、拉げるんじゃないかと心配になるレベルまで雪を積もらせた屋根が車窓を埋めていて、その雪が線路にも積もっていたことを考えるとそりゃあんな遅れにもなるわ......と思いつつ。
そんな瀬戸内の人間には全く縁のない真っ白な景色の中を突き進み、北海道第二の都市へ。
到着前に何と間違えたのか「まもなく終着の旭川です。」なんて車掌氏の放送が掛かったりしましたが、この列車はここからが本番。
最北への長い一本道。稚内へはまだまだかかります。
先述の通り、旭川までの利用客もある程度居たため、少し空いたかなという印象を受けたものの、それと入れ替わる形で旭川からの客を乗せ、結局先ほどまでとあまり変わらぬ乗車率で列車は北へ。
閉塞方式の切り替えのために永山に止まったあたりからちらちらと雪が舞い始めましたが、塩狩峠を越えるとほどなく止み、その後は降ったり止んだりを繰り返していました。
名寄までの間はところどころに点在する主要な駅にぽつぽつ止まるものの、ほとんどの時間はまっすぐな線路をぶっ飛ばしている特急に揺られているだけ。
何をするでもなく、あまり変わり映えすることのない車窓をずっと眺めていました。
この時点で岩見沢付近で大雪による遅れを引きずって15分ほどの遅延。
平常時であればそこそこの遅れですが、前日の上り宗谷が1時間近い遅れで札幌に戻って来たのを見ていたため、それに比べればなんてことないものに見えてしまうのが恐ろしいところ。
本当に雪国って大変だなあとしみじみ。
美深に停車中、止んでいた雪がちらほらと降り出したのでまたまた窓から外を眺めていたのですが、ふっと目に入ったのがこれ。
初めは綿雪かなーと思っていたのですが、よく見たら雪の結晶じゃん!すげえ!と密かにテンション大上がり。
スキー場で毛糸帽子にひっついた小さいものは数度見かけたことはありますが、まさかこんな暖房の効いた特急の車内から観察できるとは......。
1分ちょっとの停車の間溶けることなくずっと張り付いていましたが発車と同時に剥がれ落ちていってしまいました。嗚呼、諸行無常......。
札幌から座り続けて早3時間。
小腹が空いたので札幌の売店で安くなっていたたこめしのおにぎりを引っ張り出してきました。
ダシの効いたお米に大きいタコがいっぱい。
本来は200円程するのも納得の味でした*3。おいしかったです。
次の停車駅は音威子府。
音威子府と言えば黒いお蕎麦が有名ですが、生憎食べに行けるような時間はありません。が、いろいろな場所で美味しいと言われているそれを食べずに帰ってしまうのは何ともいただけない。
という訳で......
GWを使って東京で食べられるお店に行ってきました*4。
駅で売られていた当時の復刻版だそうで、非常に美味しかったです。
麺の製造が終わってしまう前にまた行きたいですね*5。
音威子府を出て川沿いをうねうね走っていると、急に鋭い警笛が鳴ったかと思えば強いブレーキがかかり急減速。
何事かと思いましたが、原因はエゾシカ。
「この先エゾシカなどの野生動物が多数出没する区間を走行致します。」という文言、北海道の特急列車の放送で枕詞のように扱われるのでいろいろな所で耳にするのですが、本当に文字通り「出没」するものなんですね。
幸いぶつかったりはしなかったようで、すぐに加速していきました。
その後も飽きることなく流れる車窓を眺めていれば、線路わきの道路の青看板に稚内の文字。
ようやく目前にまで迫っているのか~と思って、なんとなく時計を見てみればその地まで後30分。
あぁ......まだそんなに掛かるんですね......。
日本最北の無人駅である抜海を通過し、左手に一瞬だけ日本海が見えたかと思えば、それまでずっと真っ白な原野だけだった景色が一変、急に住宅が立ち並ぶ風景が広がり、そして......。
日本最北端の駅、終点、稚内駅到着です――。
とうとう来ちゃった。来ちゃったよ。
函館に着いた時にも同じようなことを思いましたが、この不思議な情感をどう言語化したらいいのか毎回分からないんですよね。
ようやく辿り着いたことに対する高揚感というかなんというか......。なんとか伝わらないものか。
もともと21分の折り返し時間に、岩見沢からの17分遅れのまま到着。
そのため乗客が捌けたらすぐに改札を始めるとのことで、一息つく間もなく指定席を確保して駅舎等々の写真を撮って戻れば既に改札が始まっていました。
宗谷岬をはじめ、北防波堤やらノシャップ岬やら行ってみたい場所はいっぱいあるので再訪は確定。
後ろ髪を引かれつつ折り返しのサロベツに乗り込みます。
私と同じく、稚内に来るだけ来て即折り返しの人も数名いたようで、行きでも見た格好の人がちらほら居た他はスーツを着たビジネスマンやらスーツケースを転がす観光客やらで指定席の4割ほどは埋まっていました。
席について一息つけばすぐにドアが閉まり発車。
結局稚内の滞在時間は8分。まぁ、旅ってこういうものでしょう。
次の南稚内発車時に現在2分遅れで運転との放送。
先にも書きましたが、本来であれば21分ある折り返し時間に17分遅れで到着したのを爆速で折り返し作業を行い改札して即発車。これで15分も巻けるてるの意味が分からない(誉め言葉)。
短い折り返し時間で効率的に準備をするためか、下りの南稚内発車時点で既に車内清掃を始めていたのがなるほどなーと。
稚内を発った時点で時刻は13時を回ったころ。
5時間以上座席に座っているだけですが、それでもお腹は空いてくるもの。
空腹を満たすため、カバンに潜ませていたお弁当を机の上に広げます。
札幌の駅で買った函館の駅弁を稚内からの帰路で食べる、傍から見たら謎な行為。
甘辛く煮付けられたニシンと薄味の数の子が絶妙にマッチしてめちゃくちゃおいしかったです。
昨日の遅れを見てある程度予想はしていましたが、稚内で何も手に入れられない可能性も考えていたので、札幌では多めに食料を確保していたのですが、それが功を奏し、長い乗車時間でも干からびることなく快適に過ごせました*7。
しばらくは遅れを回復するかのように順調に飛ばしていましたが、往路で急減速した音威子府近くでまたもやブレーキ。
よく見れば線路沿いに生えている木の低めの位置の皮は剝かれているし、なんならその元凶がしれっと何食わぬ顔でこちらを眺めているのがなんとも面白かったです。
行きと変わらぬ雪景色を眺め続け、塩狩峠を越えれば天塩*8を抜けて石狩に。
ここまで来れば長い宗谷本線もあと少し。
長い乗車時間の暇つぶしのために電子書籍を数冊ほど用意していたのですが、ずーっと飽きもせず車窓を見ていたため使うことなく旭川まで戻ってきてしまいました。
その車窓も大半が雪と防雪林でしたが。
近代的な建築の都会的な駅。
洗練されたデザインの建物もさることながら、柱のひとつとってもお洒落でよい。
常に駅構内に静かなジャズが響き渡っているのもその雰囲気に調和していて、ゆったりとした時間が流れているように感じます。
が、5分遅れて到着した特急から降りた私にはゆったりしている時間はなく、せかせかと乗り換えのホームまで急ぎ移動。
電化区間のほぼ最北であるこの駅で気動車特急から乗り換えるのはまたもや気動車特急。
気になっていた車両の一つであったラベンダー編成。乗りたいが為に運用を事前に確認して旅程を組んでいたので、車両差し替えが無くてよかったとホッとしながら乗車。
こちらもサロベツなどと同じく長距離を走る列車で、どれぐらい混むのかは不明。
という訳で短い乗り換え時間の間に指定券を発行したのですが、先ほどまでとは打って変わってガラガラなま旭川を発車。
ちょっぴり拍子抜けしましたが、後々見に行ったラウンジスペースは何故か大盛況だったので取って間違いはなかったと思います。
動き始めた頃には既に日は落ちており、加えて雪が降り始めたことで車窓には辛うじて街明かりが見えるばかり。
こうなってしまえば窓の外を見るのは諦め、周りに人がいないのをいいことに、車内設備のwifiとコンセントをフルに使ってパソコンを広げて作業していました。
なんとなく電波が悪いなーと地図を見れば北見峠に差し掛かるところ。
よくもまあこんなところに鉄道を通したなと思わんばかりですが、この辺りにも駅があったということはそれなりに使われていた過去があるんでしょうね。
峠を越えてしばらく走れば遠軽へ。
折り返し準備の間に外の空気を吸いに出てみたのですが、随分と前時代的な電照板が今も光っていました。
一番下の段は目張りされていたのですが、もしやしれっと名寄方面とか隠されていたりしないですかね......。
進行方向を変えて発車し、常紋峠を越えるとまた雪が舞い始め、それと同時になぜかLINEが使えなくなる謎のバグが発生して少々困っていたのは別の話。
北見に着くと放送がかかった途端、急にトンネルに。
なんでこんな平野部に?と一瞬謎に感じましたが、いわゆる都市トンネルってやつなんでしょうか。
ここで同じ車両に乗っていた乗客も降りて行ってしまい、いよいよ周りは自分一人に。
真っ暗な闇の中を突き進む車両の音と規則正しいジョイント音だけが響く空間。
いま、旅してるなーと最大限感じることが出来るとても好きな瞬間だったりします。
網走
旭川から3時間強揺られた先で少し低い声の俊夫おじさんの放送を聞いて降りてみれば、なんともレトロな雰囲気が色濃く残る駅に。
駅前の歩道なのか、はたまた車道にはみ出ているのか怪しい道を通って、とりあえず重い荷物を置きにホテルにチェックイン。
で、一息ついて再び出てきてみれば雪が強まっていました。寒い。
あまりにも寒すぎるので駅舎の中に引っ込んで待合室で暖を取っていたのですが、ヘッドマークの展示やら網走監獄の展示やら、いろいろと見ていて飽きなかったです。
この駅に到着する列車は札幌からの最終オホーツクを残すのみ。
が、それまでやや時間があったので駅舎周りを散策。
網走だったらこれやらなくちゃなと思ったけど、1人だから撮ってくれる人いねえわ pic.twitter.com/nCUOibdj1X
— 枚槻 (@Hira2ki) 2022年2月4日
各所でよく見るお約束のパネルですが、生憎おひとり様なので撮ってくれる人はいません。
なので丁度目の前に立っていた白ポスト*9の上にカメラを置いてセルフポトレ。
まぁ......折角だし、やりたくなるよね......。
そんなことをしていたらもう少しでオホーツクが入ってくる時間。
ホームから撮るのだとなんだか味気ないので、別の場所から撮ると決め、暖かい待合室に別れを告げて移動します。
雪の吹き荒ぶ中、駅からちょっと歩いたところにある第4種踏切へ。
雪と共に強くなってきた風を避けるような場所もないので、ただひたすらに凍えながら待つこと十数分。
軽やかなエンジン音を響かせながら遠くからやってくる雪に塗れた最終特急。
10分ほど遅れての到着でしたが、これは待った甲斐があったというもの。かっこよ......。
どうせなので車庫に引き上げるところまで追っかけていたのですが、雪も相まってめちゃくちゃに格好いい。最高か。
あまりに興奮しながら撮っていたもので、ふと気づいた時に寒さで指先の感覚がほぼ無くなっていたのには流石に焦りました。
結局あと30分で日付が変わるというところまで撮って回っていたので食事に関しては何も考えておらず、夕食を見繕いにセイコーマートへ。
レジの店員さんと他愛もない話をしながら会計を済ませ、しんしんと雪が降り積もる道をゆっくり走る除雪車を見ながら宿まで戻ります。
事前に公式HPで予告はされていましたが、どうやら明日は楽しいことになりそうで。
始発のオホーツクも撮りに行こうかなーとかぼんやり考えながらセコマの100円パスタを食べてこの日は終わり。
続きます。